政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「おい、こらっ、彩乃!しっかりしろ!」

将吾さんが眉を(ひそ)めて、わたしを(たしな)める。

でも、飲んでいたのがお酒だったと聞いて、急に酔いが回ってくるような気がした。
もう、頭の中がぐるぐるだ。
自然と将吾さんの胸に頭を預けていた。

将吾さんは天を仰いだ。そして、

「おめでたい席の途中で失礼するのは心苦しいのですが、彩乃はおれが連れて帰ります」

と、テーブルの人たちに告げた。

「いいよ、いいよ、富多。どうせ、もうそろそろお開きの時間だ」

太陽が苦笑しながら言った。「花嫁の兄」からのお許しが得られた。

「悪いな、朝比奈」

将吾さんが太陽に顔を歪めて謝る。

「裕太君、悪いけど、お義父(とう)さんとお義母(かあ)さんによろしく言っといてくれ……こいつのこの状態はちょっと見せられないから」

裕太はこくこくっ、と肯いて、

「了解っす!……すいません、将吾さん、姉貴がこんなんで」

ぺこっと頭を下げる。

確かに、慶人と蓉子の結婚式でこんな姿を親に見られたら(特に母親に見られたら)公衆の面前でどんな叱責を受けるかしれやしない。

「……さっ、彩乃っ。うちに帰るぞ!」

将吾さんはますます足元がおぼつかなくなっているわたしを、抱きかかえるようにして支えてくれている。

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