政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「なんだ、ここにいたのか?」

副社長は普段この部屋には絶対に来ない人なので、わたしたちは驚いたが、特に七海ちゃんがテンパっていた。

「お急ぎですか?」

わたしは冷静に尋ねた。
島村さんはどうしたのだろう?

「取引先の社長がお見えになった。島村は今、法務部に行ってるから、彩乃、至急来てくれ」

そう言って、副社長は戻って行った。

最近、弁護士資格を持つ島村さんが、社外との契約や社内でのコンプライアンス関連のことで、法務部に行くことが増えている。
早晩、秘書室長を辞して法務部長に就任するための布石なのであろう。

とりあえず、ランチボックスやスープジャーはここに置いといて、すぐに副社長室に戻ってお客様にお茶出しだ。

「誠子さん、前室をお願いできますか?」

わたしが副社長の執務室に入っているときに、前室のわたしのデスクに電話や急ぎのメールが入ることがあるので、だれかが代わりをしてくれなければならない。

島村さんなら並行して処理できるけれど、わたしはまだそこまでできない。
また、七海ちゃんにお願いすると、グループ秘書の仕事が滞るかもしれない。

誠子さんが「いいわよ」と言ってくれたので、七海ちゃんに手を振り、二人で副社長室に向かった。

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