政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「誠子さん、『ちかこ』って銀座の高級クラブでバイトしてたときとかの源氏名ですか?」

わたしは声を潜めて尋ねた。
一応、気を遣って、ただのおミズじゃなく「銀座の高級クラブ」にした。

「なんで、わたしが銀座の高級クラブで働かなきゃなんないのよっ!」

誠子さんは憤慨した。

……初めて会ったときのあなたは、お勤めになっていてもおかしくない派手な雰囲気でしたよ。

「……誓子の方が本名よ」

彼女はぽつりと言った。

「えっ、じゃあ……『誠子』が源氏名?」

「なんで会社で源氏名を名乗るのよっ!?」

……ですよね~?

「改名したのよ」

……えっ?

そのとき、ドアが開いて島村さんが戻ってきた。

「島村さんっ、水野さんのお手伝いをしてきてもいいですかっ?」

わたしのただならぬ勢いに、

「は…はい……構いませんが」

思わず許可を出してしまったみたいだが。

「誓子さん、行きましょう!」

わたしは、誠子さん改め誓子さんを促した。

「……『ちかこさん』?」

島村さんは片眉を上げた。

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