政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

『おまえ、富多副社長と同棲してんのか?』

電話口でケンちゃんがくくっと笑っている。

「将吾さんの実家でだよ」

だから、同棲じゃなくて「同居」です。

『そんなことよりさ……誓子(ちかこ)さんは、まだ「大橋」だよな?』

ケンちゃんは、恐る恐るといった感じで尋ねてきた。

「えっ?」

『誓子さんがまだ結婚してないよな?……ってことだよっ』

……わかってるわよ、そんなこと。

「そうよ。まだ結婚してないわ。独身よ」

……初めてのお見合いで、あなたが誓子さんをフッたからね。

『……そうか』

とたんにホッとした声になる。

『じゃあ、少しはおれにもチャンスがあるんだな?』

「少しはチャンスがあるって……ケンちゃん、どういうこと?」

そのとき、突然、将吾さんがわたしの髪を払って、首筋にくちびるを這わせてきた。

……ちょ、ちょっと、なにすんのよ!?
わたしは電話中なのよっ!?

身体(からだ)をねじって逃れようとしたら、今度はH&Mのニットのカーディガンの上から、大きな手のひらで左右の胸を揉まれた。

「きゃっ」

思わず悲鳴が出た。かろうじて、変な声じゃなくてセーフだ。

『どうした?』

「な…なんでもない……今さらなに言ってるのよ?フッたのはそっちでしょ?」

将吾さんの手の動きは止まらず、カーディガンのボタンを次々と外し、その下のカットソーとキャミソールを一気に(まく)り上げた。

「……それとも、今日ひさしぶりに会って、逃した魚が惜しくなった?」

将吾さんが現れたブラの、背中のホックを手慣れた様子で外し、ぱかっと浮いたブラの中へ手のひらを差し入れる。

思わず甘い吐息が出てしまうのを、わたしは必死で(こら)える。

……ちょ、ちょっと、将吾さん、いったいどういうつもり!?

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