政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
Chapter 10
♡ヒミツの隠れ家に逃げます♡
二月になった。
「二八」といって、二月と八月は企業の売り上げが落ちる俗説があるが、将吾さんは年度末に備え、相変わらず超多忙であった。
さらに、四月末から五月上旬にかけてのわたしとの結婚による休暇を確保しなければならないため、かなり前倒しで処理せざるを得ない。
わたしは副社長である彼の専属秘書として、得意先のお偉方との商用などに同席する機会が増えた。
とても自分には務まらないと思っていたが、お会いするお偉方はわたしが幼い頃から「朝比奈一族の新年パーティ」で見知っている方々ばかりだった。だから、「佐藤会長」や「鈴木社長」などとお呼びした日には、
『彩乃ちゃん、みずくさいなぁ。「佐藤のおじちゃま」でいいんだよ?』
『彩乃ちゃんが「鈴木のおじちゃま」って呼んでくれないと、もうこの会社には来ないからね?』
と拗ねられてしまう。
普段、仏頂面で「この若造がどこまでやれるか、お手並み拝見」的な態度をとられている将吾さんは苦笑するしかない。
でも、『こんなことなら、もっと早く彩乃を「デビュー」させときゃよかったな』とゴチてもいたが。
……なんだか、結婚しても専属秘書を辞めさせてくれなさそうだな。
こういうような意味でも「政略結婚」する意義があるのだろう。