政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

ドレスを試着していたショップを出ると、母親がデパートで買いたいものがあると言うので、タクシーに乗るほどでもない距離のため、歩いてそちらへ向かうことになった。

大通りの交差点で信号待ちをしていたら、ふと母親が、首を伸ばすようにして遠くを見ながら言った。

「……ねぇ、彩乃。あれ、将吾さんじゃない?」

母親の視線の先へ目を送ると、ひときわ目立つ長身の男性が、道路を渡った先の横断歩道を左から右の方向へ歩いていた。

その人は、隣に小柄な女の子を連れていた。
彼女は男性の腕に手を絡ませていた。

彼らは横断歩道を渡りきり、こちらから見て対角線上のところで雑踏の中へ消えて行った。

「ママ、目が悪くなったんじゃない?
……全然、違うわよ。似てもいないし」

「そうお?」

母親はまだ腑に落ちない顔をしている。

「ママ、信号が青になってるよ」

わたしは母親を()かした。

母親は、見間違ってなどいなかった。
横断歩道を渡っていた二人は……


……将吾さんとわかばちゃんだった。

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