政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
とてもじゃないけど、将吾さんの家に戻る気はなれなかった。どんな事情があるにせよ、ウソをつかれたのは事実だし、家に戻ったら、二人の(たぶん)なに食わぬ顔と合わせることになる。
ひさしぶりに本屋へ行ってみることにした。
もともとインドア派だし、幼稚園からエスカレーターに乗って女子大まで運ばれていたので受験勉強でしゃかりきになることはなかったから、学生の頃はよく本を読んでいた。
今ではすっかり電子書籍ばかりになっているけれど、スマホはもちろんタブレットくらいのディスプレイの大きさでも、ずーっと読んでると目の疲れが半端ない。
……そうだ、今日は紙の本を買おう。
洋書コーナーに足を向けてみた。
こんな気分のときは、がっつり集中しないと読めない英語の本の方がいいだろう。
それに、ペーパーバックは軽いし。
棚から一冊の本を引き抜いた。
ジェーン・オースティンの「Persuasion」だ。
……日本語では「説き伏せること」とか「説得」かな?
確か、四十歳のはじめで病没した彼女の最期の作品で、前々から読みたいと思っていたものだ。
生涯に数冊しか遺していない彼女の作品は、一つひとつの分量が結構ヘビーな「大作」なのだが、これは薄くて比較的楽に読めそうだ。
どこかその辺のカフェに入って読もうかとも思ったが、せっかくなので、先刻までいたデパートまで戻ってさらに反対の方向になるけれど、お気に入りのブックカフェで、まったりと読もうと思った。