政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……彩乃、そのエンゲージリング、すっごく似合ってるね」
蓉子がわたしの左手薬指を見て、目を細めた。
ブシュロンのピヴォワンヌが、巨大なシャンデリアの光に反射して、ありえないくらいギラギラ輝いていた。
最初はこんな派手なリングはとてもつけられないと思っていたが、このような大掛かりな席にはこのくらい迫力があるものでないと、逆に場にそぐわないことがわかった。
「ずいぶん見て回ったんでしょ?」
蓉子の問いかけに、わたしは首を振った。
彼女のエンゲージもやはりゴージャスだった。
薔薇の花びらをモチーフにダイヤモンドがふんだんに使われたピアジェのローズだ。
「将吾さんの仕事が忙しくて、一日で決めたの」
「しかも、将吾さんは姉貴を秘書と一緒に行かせたんだぜ?」
裕太がおもしろおかしく言う。
「「「ええぇーっ!?」」」
蓉子、慶人、太陽が仰け反った。
「じゃあ、彩乃が一人で選んだの?」
蓉子がわたしを憐れむように見た。
「ショップに行ったら、いくつか見せられて、よくわかんないうちに決まってたんだけど。
秘書の島村さんが気の毒でね、仕事が忙しいのについてきてくれたの。だから、ずーっとタブレットで仕事してたんだよ」
「……はぁ?」
蓉子が腑に落ちない顔になる。
「そういえば、クリスマスの日にリングを受け取りに、将吾さんと一緒にショップへ行ったんだけど、店員さんが、あらかじめ伺ってたから国内外から良い石のものを集めたとかなんとか、ワケのわかんない話をしてたなぁ。セールストークだよね?」
急に、一同が黙り込んだ。