政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
♡彼の家から出て行きます♡
「……ここは、わたしが使わせてもらってる部屋です」
わたしの声は冷静だった。
ただ、奈落の底を這いずるような低い声だったけれど。
「そういうことをするのであれば、ご自分のお部屋でなさったらいかがでしょう?」
将吾さんがかばっ、と起き上がって振り向き、わたしの方を信じられない顔で見ている。
「顔面蒼白」っていうのは、こういう顔を言うんだな、と思った。
「あ…彩乃……なんで……もっと遅いのかと……」
早く帰ってきて、申し訳ありませんでしたね。
「わかばちゃん、わたしの部屋から出て行ってもらえる?」
彼女を見据えて告げる。
彼女は跳ねるように飛び起きたと同時に、モヘアのニットセーターを下ろした。
そして、顔を伏せて、なにも言わず、小走りでわたしの部屋を出て行く。
将吾さんもわかばちゃんも、一応、服は着ていた。
……もう少し遅かったら、最悪だったな。