政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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わたしは結局、また「シェルター」に避難することになった。

代々木上原の大山町の実家には帰れないし。
っていうか、将吾さんとは今度こそ破談となるわけだけど、両親にどんなふうに話したらいいものか……

……ギガトン級に気が重すぎる。

とにかく、一回落ち着こう。
今日はいろんなことがあり過ぎるくらいあり過ぎた。

タクシーを降りたわたしは、右手にハンズプラスの赤いスーツケース、左手にはエルメスのタンジェリンカラーのドゥパリを持ちながらマイクロモノグラムのキャリーバッグをがらごろと引いて、マンションのエントランスに入って行く。

「……朝比奈さま、お手伝いしますね」

まさに、拙者が助太刀(すけだち)いたす、という感じで、コンシェルジュが駆け寄ってきた。
といっても「和」とは真逆の、ホテルのドアマンのような制服を着た、王子さま系のイケメンなのであるが。

彼は「お手伝い」するというより、スーツケースとキャリーバッグを二つともひょいっとポーターのように引き受けて、さっさとエレベーターまでがらごろしてくれる。

やってきた箱にわたしが乗り「ありがとうございまし……」と言いかけたら、彼も乗り込んできて、結局、部屋の前までがらごろしてくれた。とっても助かった。

「どうも……ありがとうございました」

特に、ややもすると気持ちがささくれ立ちそうになるこんなときは「やさしさ」が身にしみる。

「いえいえ、お役に立ててなによりです。
それではなにかございましたら、なんなりとおっしゃってください」

コンシェルジュの彼は一礼した。

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