政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

海洋がゲストルームのペルシア絨毯(じゅうたん)のラグの上にスーツケースを下ろした。

「ここ数週間ろくに寝てない上に時差ボケで、眠たくてしかたないんだ。寝させてくれ」

前髪をぐしゃっと掻き上げて、気だるそうに(うめ)いた。

そういえば、ぼんやりした目をして、顔色がひどく悪い。太陽と裕太と呑みに行ったはずなのに、こんな体調だから、早々に切り上げて帰ってきたのかもしれない。

「あ…ごめん。部屋に戻ってくれていいから」

わたしが表情を和らげて言うと、海洋はゲストルームを出て、マスタールームへ戻って行った。

すぐさま、かちゃりと施錠する。
海洋がいったん眠りについたら、踏んでも蹴っても起きないことは百も承知だけれども。

とりあえず、シワになると困るスーツやワンピをスーツケースから取り出し、クローゼットに収める。それから、キャリーバッグからユニクロのもふもふのフリースの上下やら下着類やらを出して、隣にあるシャワールームに入った。

マスタールームにしかバスルームがなかったはずだが、以前リフォームした際に二つのゲストルームにもシャワールームを設置したようだ。

……やっと、熱いシャワーが浴びられる。

わたしは、将吾さんからもらったエンゲージのピヴォワンヌを、左手薬指から抜き取った。

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