政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
Chapter 11
♡同居する相手が変わります♡
三月に入った月曜日、わたしは歯を食いしばって出社した。
いつまでこの会社に勤めていられるかはわからないけれど、同僚の誓子さんや七海ちゃんはもう友達みたいだし、ほかの部署の人たちとも挨拶やちょっとした立ち話ができるようになってきた矢先だったからとても残念だ。
あっ、ケンちゃんに頼まれていた誓子さんへの「橋渡し」はなんとしても退職までに仕上げておかないと!
……だけど、いくら「友達」といっても今回の件のことはだれにも言えない。
たとえ、幼稚園からの親友、華絵であっても。
「朝比奈」の名を汚すかもしれないことは他言しない、というのは哀しいかな、骨の髄まで叩き込まれて染み込んでいるのである。
だから、結局、海洋との間であったことも、華絵には言わずじまいだ。
だから、今でも「美しい誤解」をしてくれているのだが……
今回の将吾さんとの破談の件も、名を重んじる両家のためになんとか穏便に済ませたい。
そして、将吾さんには……愛する人と幸せになってほしい。