政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

実家を出て、駐車スペースの将吾のマセラティに着くまで、わたしたちは手をつないで歩いた。
指と指をしっかり絡めた「恋人つなぎ」だ。

シートに座ると、将吾がわたしの左手薬指に、ちゅっと口づけた。ブシュロンのピヴォワンヌが、堂々と生還を果たしていた。

そして、わたしの肩を引き寄せ、今度はわたしのくちびるに、ちゅっとキスをした。
それが合図となって、わたしたちはお互いを際限なく求める深いキスへ移っていく。

「……彩乃を抱きたい」

一刹那、くちびるを離した将吾がせつなげにつぶやく。

「……えっ、今夜もなの?」

「今まで寸止めしていた自分自身を呪い殺したくなるくらい、おまえがほしい」

わたしたちは土曜日の昼から、外苑前のマンションで、これまであんなに最後まで進まなかったのがウソだったかのように……

まるでこれまでのことを取り戻すかのように……何度も何度もカラダを重ねていた。

将吾はノーガードでわたしを抱いた。
わたしに人工授精ではなく「自力」で子どもをもうけさせることを「実践」しているのだろう。困ったもんだ。

でも、海洋のときにあれほど不安だった「妊娠への恐怖」は今のわたしにはまったくない。

むしろ、将吾からわたしの子宮に注がれる彼の「いのちの源」をひとしずくも漏らさず受け止めたい、とまで思う。

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