政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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将吾さんの元麻布の実家に戻った。

義父(とう)さんと、お義母(かあ)さんのマイヤさんに、

「……ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」

と深々と頭を下げた。

「彩乃、うちに戻ってきてくれてありがとう」

頭を上げると、マイヤさんからふわっとハグされた。

「どうせ将吾の不手際だろう?
……堅苦しい挨拶はいいから、みんなでfika(フィーカ)でもしようじゃないか。美味(おい)しいシナモンロールもあるよ」

落ち着いた大人の魅力あふれる社長が、将吾によく似た笑顔でおおらかに言った。
fikaとは、スウェーデンの人たちがこよなく愛するおしゃべりしながらのコーヒータイムである。

将吾はたちまち、うげっ、という顔をして「彩乃、部屋に行こうぜ」と言ってマイヤさんからわたしを引き剥がした。

「……ねぇ、なんで、fikaをしないの?」

部屋に行く道すがら、将吾に尋ねる。

片方の手でわたしのマイクロモノグラムのキャリーバッグを持ってくれている。
もう片方の手はわたしと恋人つなぎだ。

「いい歳した両親のバカップル丸出しの姿なんか、見たくねえんだよ。気持ち悪い」

将吾がぶるっ、と震えた。

彼の両親は本当に仲がいい。
わたしと将吾も、何歳(いくつ)になってもそんなふうになれればいいな。

とりあえず、キャリーバッグの中のものを片したいので、わたしの部屋に入る。

そして、目の前の光景に目を見張った。

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