政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

意識がなんだか、ぼぉっとしてきたときに、やっとくちびるが離れた。

「……鼻で息吸え、バカ」

将吾がくくっ、と笑った。

「おれのこと、忘れんなよ……ちゃんと覚えとけよ」

そう言ってベッドの上でわたしを見下ろす将吾の眼は、捕らえた獲物を決して放さない、獰猛な肉食獣そのものだった。

なのに……それとはまるで逆の、まるで陽だまりのような、やさしくてやわらかな目にも見えた。

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