政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「シャイで勤勉で時間厳守、ってところは似てるかもしれないけれど……違うな、って思うこともあるわ」
マイヤさんがコーヒーを一口含む。
「日本の人たちみたいに『つき合ってください』なんて言わないからね」
……ええぇっ!?
「じゃあ、どうやって『カレカノ』になるんですか?」
わたしは身を乗り出した。
「なんとなく」
マイヤさんは平然と言った。
……なんとなく?
「いいな、と思った相手とは、お互いの家でfikaして、何回かセックスしているうちにお互いに『これはセックスじゃなくてメイク・ラブだなぁ』って思えるようになったら『なんとなく』そういう関係になってるわね。そうなってくると、今度は同棲したくなるわね。だから、例えば『一緒に暮らそう』なんかが、日本でいう『つき合ってください』みたいな『決定的』なものになるのかしら?」
マイヤさんはシナモンロールをまた一口ちぎって食べる。
……同じ「行為」でも、カラダがつながっただけのセックスじゃなくココロまでつながった「メイク・ラブ」になれば、ってことかな?
わたしも食べてみた。ほどよい甘さで美味しい。コーヒーとよく合うわ。
……道理で、将吾が突然告白ってくる女の子を「自爆テロ」って言うわけだ。
「性教育がきっちりしてる国だからこそ、子どもの性に寛容で、十代でもどちらかの実家で一緒に暮らす子たちもいるわ。親もその方が安心だし」
……ええぇっ!?
もしかしたら、将吾はそういう感覚から、わたしと自分の実家で「同居」しようと思ったのかな?
「一緒に暮らさないにしても、カラダの相性をきっちり確かめてから、っていうのは鉄則ね」
……うーん、将吾もやたら「カラダの相性」を確かめたがってたなぁ。
あ、うちの実家に来たとき、わたしの部屋で(なぜか自分の部屋なのに、将吾に連れ込まれたんだけど)コーヒーを飲んだっけ。
キスしてベッドにも誘われたなぁ。
……もしかして、あれがfikaだったのかな?
あのあと、「人工授精」の件で将吾がブチ切れて帰っちゃったけれども。