政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
海洋も動いてくれていた。
彼の祖父である神山町のおじいさまと松濤に出向いて、わたしとは「ルームシェア」をしていただけで「疚しい」ことはなにもない(まぁ、まったくないこともないんだけれども)と断言してくれた。
松濤に出向いて、といっても、実は隣の家であるのだが。
妙なところで江戸っ子気質な神山町のおじいさまは「松濤」というよく知られた高級住宅街に居を構えるのは『半可通のやるこった』と言い放ち、松濤のおじいさまのお屋敷がちょうど松濤と(知る人ぞ知る高級住宅街の)神山町との境界に建っていたため、神山町側の方の隣にお屋敷を構えた。
そんな、仲が良いのか悪いのかよくわからない二人なもんだから、神山町のおじいさまが間に入ってくだすっても、結局火に油を注いだだけだった。
最初は『もう、わしらも歳だから、若い者の行く末に口を出すな』と目を細めて言ってくれていたそうだ。
なのに……
いつの間にか『昔、おれが夕飯後に食おうと楽しみにしていた饅頭をおまえが勝手に食った』『いや、食ったのはおれじゃない、上の兄貴だ』と罵り合うようになっていった。
じいさま二人の血圧を心配した海洋が、自分の祖父を羽交い締めにして帰途(といっても隣の家)についたらしい。