政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……おまえらの世代で、あのじいさんのDNAを一番色濃く受け継いでそうなのは、上條だな」
将吾が低い声でつぶやいた。
「ヤツはきっと水島より先に、あさひ証券の社長になるな。あの歳で経営企画本部長になるんだ。
なにかやりたいことがあるんだろう。
そして、それが終われば、後継に水島を指名するんじゃないかな?」
腕を組んで預言者のように告げる。
「彩乃、そしたらヤツをあさひフィナンシャルへ引っ張ってきて、おまえの弟の裕太がそれなりになるまで社長をさせろ。そして、裕太が社長になったら、会長にして後見役にするんだ」
……確かに、わたしたちよりずっと若い裕太なのに、背負わなければならないのは「本丸」である持株会社だ。気心の知れた大地が「後見」してくれるとありがたい。
「もちろん、TOMITAホールディングスとしては閨閥になるわけだから、裕太のことは全面的にバックアップさせてもらうがな」
……まぁ、それがわたしと将吾との結婚の本来の目的なんだけれど。
「上條があのじいさんみたいにならないように『親戚一同』で気をつけないとな」
「松濤のおじいさまを手のひらで転がせるくらいの亜湖さんがついてるから、大丈夫よ」
わたしは、ふふっ、と笑った。
どうやら、わたしもようやく「朝比奈の娘」として一族に貢献できそうだ。