政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……あっ」
突然、将吾が腕を伸ばして指を差す。
「There’s a Japanese doll....」
〈日本人形がある…〉
そこには、ガラスケースに入った市松人形が飾られていた。
「亜湖ちゃんに似てるでしょう?
……本当は、若い頃に主人がわたくしをモデルにして作らせたものなんだけれど」
松濤のおばあさまがふっくらと笑った。
「あのときの『Japanese doll』は……上條の奥さんだったんだな」
将吾は思い出せなかったことをやっと思い出したときの、すっきりした表情をしていた。
「『あのとき』の、って?」
わたしは犬の目で尋ねる。
「たった一度だけ、おまえんちのNew year’s party に行ったことがある……十歳くらいのガキの頃だったな」
亜湖さんが来たのは、たった一回だけだ。
わたしが小学校の三年生のときである。