政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
……その刹那、わたしは「かつてのわたし」に引き戻された。
その漆黒の前髪のかき上げ方、その目の伏せ方、その頬杖をつくしぐさ。
別人であることは百も承知だ。
面影がある、というだけで顔がそっくりというわけではない。
なのに……わたしはどこかでまだあいつを追っている。
あいつの面影をだれかの中に探しては、
あいつの気配を感じて、
あいつに「会って」いる。
わたしは、ジョッキに残ったビールを一気に呑み干した。