政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
Epilogue

チャペルでの挙式が終わった。

これから披露宴会場へと移動するのだが、今は控室で二人きりで待機している。

わが国を代表する老舗ホテルの、芸能人なんかの派手な結婚式でテレビ中継が入ったりする、美しい鳥の名がついた一番大きくて広い会場で、わたしたちは結婚披露宴を(おこな)う。

わたしと将吾の左手薬指には、つい先刻(さっき)交わしたブシュロンのゴドロンが、しっかりとはまっていた。

「……やっぱり、これにしてよかったな」

将吾がわたしのゴドロンに、ちゅっ、とキスをする。

「今の流行(はや)りは奥さんのリングにだけ、ダイヤモンドがついてるヤツらしいよ」

わたしの周りだけでも、親友の華絵は「カルティエの1895のハーフエタニティ」、親戚の蓉子は「ピアジェのポセションのフルエタニティ」、親戚になった亜湖さんは「ヴァン・クリーフ&アーペルのエステル」でビーズが一周取り巻いていて、ダンナさまとは同じシリーズであっても、違うデザインだ。

でも、わたしと将吾は、まったくの同じデザインである。

「……まったく同じデザインでないと、結婚指輪の意味がないじゃねえか」

そう言って、将吾は自分の左手の指とわたしの左手の指を絡めた。

……やっぱり、めんどくさい人だ。

わたしは、ふふっ、と笑った。

The Carpentersの ♪ I Need To Be In Love のインストゥルメンタルが、館内のBGMで薄く流れている。

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