政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「彩乃、せめて、キスだけでもさせてくれ」

将吾が焦れた目で懇願する。

先刻(さっき)……とんでもなく長い「誓いのキス」をさせられてしまったんですけれども。

舌まで入れられたし……厳かなチャペル内なのに拍手喝采だったし……神父さまが呆れてたし……

……だけど……キスだけ、なら。

そう思って、ちゅっ、と将吾のくちびるにキスをすると……とんでもなく深いキスが返ってくるではないかっ⁉︎

しかも、彼のくちびるは留まることを知らず、わたしの首筋を通過して、胸元まで迫る勢いではないかっ⁉︎

どうやら、ハートカットのビスチェの寄せて上げてつくった「奇跡の谷間」に欲情しているらしい。

……困ったもんだ。

「……ダメだってぇ」

だけど、拒否する声が甘い吐息になる。
これでは、逆効果だ。

そのとき、コンコンコンとドアがノックされた。

「お時間です。披露宴会場にご移動願います」

と、ドアの向こうから声がかかる。


……助かった。

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