政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……彩乃、ほんとにいいの?」
何回、訊かれたであろう。
父から、母から、妹のような蓉子から……
そして、今、親友の華絵から。
「いいのよ。もう、決めたんだから」
わたしは、すべての思いを断ち切るかのように、牛フィレ肉のステーキにナイフを入れる。
「……『あいつ』じゃなくても、いいの?」
華絵は上目遣いで探るように訊く。
わたしは無言で、切った牛フィレ肉を口に入れる。
「……だったら、その秘書さんの方がまだいいかも」
華絵が牛フィレ肉を口に放り込みながら、とんでもないことを言う。
「だって、海洋に似てるんでしょ?」
……固有名詞を出すな。
わたしは無言で牛フィレ肉を咀嚼する。