政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
補充しなければならない下着類のブランドとサイズを、ポケットから出したスマホにメモしていたら、バスルームから将吾さんが出てきた。
先刻わたしが渡した、シャツとボクサーパンツしか身につけていない。
「……っ!?」
わたしは、ぱっ、と目を逸らした。
「彩乃、スーツとシャツを取ってくれ」
彼はこともなげに……いや、わざとだ。
ニヤニヤして、洗った髪をタオルでごしごし拭きながら、近づいてくる。
わたしは、ダークネイビーのヒューゴ・ボスのオーダーメイドスーツと白いワイシャツを無言で渡した。
「おっ、Thanks!」
将吾さんの機嫌はすっかり治っているようだ。口笛でも吹きそうな気配である。
「おー、キレイに片付いたな、Thanks a lot !
……あと、適当にタイも選んでくれ」
わたしは再度ワードローブの扉を開けて、ずらりと並んだネクタイを見て、どれがいいか考えを巡らす。
ふと、左手が軽くなったなぁ、と思ったら、わたしの手からスマホが消えていた。
あれ?と、きょろきょろと見回すと、将吾さんが勝手に操作していた。
「なっ、なにをして……」
「LINEのIDもメルアドも知らない婚約者なんてありえないだろ?おれのを今……登録し終えたぞ。
……で、送信、っと」