政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……なぁ、常識的には婚約中の今が、一番幸せな時期だと思うんだけど?」
ソファのアームに肘をかけた裕太がつぶやいた。
「姉貴を見ていると、とてもそうは思えない」
……「弟」という人種は容赦ないなぁ。
わたしたちが「政略結婚」だってことを知ってるくせに。
「将吾さんは仕事なのよ」
わたしは一言で片付けた。
だって、ほんとのことだ。秘書だから、スケジュール把握はバッチリだ。
「イブだぜ?クリスマスだぜ?
連休だっていうのに、婚約者のために一日も空けられねえのかよ、そいつ」
なぜか、裕太の方がイラついている。
「おふくろから聞いたけどさ。そいつ、婚約指輪も秘書任せだったらしいじゃん」
将吾さんは裕太からすっかり「そいつ」呼ばわりされている。一応、大学の先輩なんだよ?
「……なぁ、ねえちゃん」
あら、どうした?昔の呼び方じゃん。
大学入ってからは一丁前に「姉貴」呼びだったのに。
「アメリカの海洋さんに連絡しなくていいの?」
……裕太、あんたもか。