政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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翌朝、まだ早い時間に副社長室に行って、プライベートルームをノックする。
ドアを開けると、また将吾さんがベッドで寝ていた。

昨夜、十一時頃に「終わった」と通話してきたのだから、たぶん「泊まり」かな?とは思っていた。

この前と違って、起きずにぐっすり眠っている。相当疲れているんだろう。

わたしは引いてきたマイクロモノグラムのキャリーバッグをなるべく音を立てないように壁際に置く。機内に持ち込める小型のタイプで、マイクロモノグラムの柄にセミオーダーしたものだ。

無造作にソファに掛けられた衣類をクリーニングに出せるようにして、ローテーブルにあるコンビニ弁当やペットボトルを片付けた。
彼の方が悲惨なクリスマスイブだったらしい。

そして、今日身につけてもらうスーツとワイシャツとネクタイを用意して、ソファの上に置いた。

ふと、視線を感じた気がしてベッドの方を見ると、いつの間にか将吾さんが目を覚まして、こちらを見ていた。

「……ごめんなさい。起こしちゃったね」

わたしは微笑んだ。

将吾さんはまだ完全に目覚めていないのだろう。カフェ・オ・レ色の瞳がぼんやりとわたしを見ている。

窓から差し込む朝の光が、ダークブラウンの髪色をカフェ・オ・レ色に染め上げる。
彼の本来の髪の色だ。

あどけない表情をした将吾さんが、まるで幼い子どものように見える。


……この人と夜を過ごして朝を迎えた(ひと)たちが、この表情(かお)を見てきたに違いない。

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