政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

また、将吾さんは眠りについた。
島村さんが出社してくる時間まで、まだある。
せめて、少しでも長く寝かせておいてあげたかった。

弱冠三十歳で、だれもが知る世界的規模の会社の副社長。海外の支社も統括している責任者だ。
関連会社を含めると、数え切れないほどの人たちの生活が、人生が、彼の肩にのしかかっている。

彼のたった一つの判断ミスで、その人たちを路頭に迷わせるかもしれない。
その肩にかかる重圧はどのくらいのものだろう。

将吾さんはたった一人で、それに立ち向かっている。

……彼の秘書になったからこそ、わかったことだ。

わたしは将吾さんを起こさないように、そぉ…っと部屋の外に出た。

彼がちゃんと目覚めたとき、きっとほしくなる、ちょっと濃いめのコーヒーを淹れるために……

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