政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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本日の業務が終わった。
無事、海外の支社はクリスマス休暇に入ったらしい。今日は副社長も定時で上がれるようだ。

PCをシャットダウンし、デスクの上を片付けていたら、島村さんが執務室から出てきた。
アメリカ支社のトラブルでは、島村さんもずっと残業が続いていた。

彼のデスクで帰り支度する姿を見て、「お疲れさまでした」と、わたしは(ねぎら)いの気持ちを込めて会釈をした。

「……言い忘れていたのですが」

島村さんがいつもの調子で淡々と言った。

「プライベートルームには始業前は入らない方がいいですよ。副社長が使用していたら、寝起きがすごく悪いので、烈火のごとく怒って追い出されてしまいますから」

……えっ、そうなの!?
そういえば、初めての朝はものすごーく怖かったな。

でも、シャワーを浴びてからはずいぶん機嫌良くなったけれど……そうか、あれはシャワーで目が覚めたのね。

そして、今朝は寝ぼけてたのか、ぼーっとしてましたけど?

「もともと、自分のプライベートな部分に踏み込まれるのを極端に嫌う人ですからね」

「えっ、そうなんですか?」

わたしは目を丸くした。

「ですので、ご注意ください」

島村さんはそう言うと、バーバリーの黒いステンカラーコートをはおり、ココマイスターのブリーフケースを手にした。
そして、失礼します、と一礼して副社長室を出て行った。

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