政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
♡彼のおうちでクリスマスします♡
「……彩乃……彩乃っ」
わたしは、はっ、と我に返る。
また、ぼーっとしていたらしい。
「着いたぞ。早く降りろ、吉田が待ってる」
マイバッハの初老の運転手さんは吉田さんというらしい。ドアを開けて、わたしが降りるのを待ってくれていた。
「……あっ、すみません」
わたしは会釈してあわてて降りた。
どうやら、麻布周辺らしい。各国の大使館が見える。
……迎賓館?
降り立ったわたしは、しばらく言葉を失った。
ロココ様式の門柱の向こうで、噴水を前にしてそびえ立つ大谷石のクラシックな洋館は、明治の時代の華族の邸宅のようだ。
最近、こういう元華族の邸宅をレストランにしたり結婚式場にしたりして、リノベーションするところがあるのでその類だろう。
……もしかして、ここでクリスマスディナーとか?
ちょっとワクワクしてきたところで、将吾さんが言挙げた。
「ここ、おれんち」
……は?『おれんち』って「おれの家」ってことでしょうか?
彼はブライトリングを見て焦り出す。
「やっべえ、もうこんな時間だ。みんな待ってるなー」
……『みんな』って?
「クリスマスは、家族で集まって食うのが定番だろ?」
将吾さんはこともなげに言った。