政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「あ、あの……改めまして……朝比奈彩乃です。
先日のお見合いでは失礼いたしました。
そして、本日は突然お宅にお伺いしまして申し訳ありません」
わたしは深々とお辞儀をした。
「将吾、あなた……彩乃さんにうちへご招待すること、ちゃんと言ってなかったの?」
お義母さまはじろり、と将吾さんを見た。
「仕事がすんげぇ忙しくて、詳しく言うヒマがなかったんだよっ……でも、めかしこんでは来させたから」
そう言って、将吾さんは少し得意げにわたしを見た。
いやいやいや……ご実家にお呼ばれされるのなら、こんなでっかい幾何学模様のワンピなんか着てこないからっ。もっと「清楚系」で「従順な嫁になりそうな系」の、好感度アップ作戦的な服で来るからっ!
……っていうか。
実家に連れてくるのなら、前もって言っておいてよぉっ⁉︎
「……彩乃さん、わたし、お見合いのときのあなたのお着物を見ても思ったんだけど」
あぁ、♪ 来ぅーる~、きっと来ぅる~
貞子じゃないよっ。「お姑さん」からのお初のダメ出しだよっ。
「……キャバ嬢、でしょうか?」
先手を打って、先に言っておこう。
「……はぁ?」
お義母さまの麗しいお顔が素っ頓狂になった。
「言われたんです、将吾さんから……『キャバ嬢の初詣』って」
わたしは思い切って言った。
……でも、お義母さま、大丈夫です。
これからは、この元華族のお屋敷みたいなおうちの嫁にふさわしい服装を心がけます。
「ばっ、バカかっ……おまえ、なに言って……」
将吾さんが、突然、おろおろしだした。
「……あんた、彩乃さんにそんなこと、言ったの?」
お義母さまは、井戸の底から貞子を呼び覚まさせるような、低ぅーいお声を発された。