政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「あ、そうだ。彩乃、婚約指輪見せてやれっ。
マイヤさん、見たいだろ?」
いきなり将吾さんがわたしの左手を掴んで、お義母さまに、ほれっ、と見せる。
「指輪とお揃いのイヤリングなんだ」
今度はわたしの耳にかかった髪をぱらっと払って見せる。
……そのとき、わたしの視界の端に、わかばさんの表情が入ってきた。
この場に立っているのがやっと、というくらい青ざめ、思いつめた顔をしていた。
兄の島村さんがわかばさんを促し、この場からそっと辞去した。
わたしの頬を思わずほころばせる、この婚約指輪は……
……知らず識らずのうちに、だれかの心を傷つけていた。