政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

将吾さんが席を立ったのをきっかけに、お義母(かあ)さまが声をかけてきた。

「……彩乃さん、楽しんでる?」

「は、はい……お料理、とっても美味(おい)しいです」

海老と野菜のアラビアータをガレットで包んだものを、わたしは美味しくいただいていた。
さすが、うちの新年パーティでも毎年利用しているホテルのケータリングだ。

「ふふふ……まさか、こんなに急に一人息子の結婚が決まるとは思わなかったわ」

……お義母さま、わたくしもでございます。

「しかも、お見合いで、だなんて。
わたしと夫は熱烈な恋愛結婚だったから」

……も、申し訳ありません。政略結婚で。

「実は、ちょっと心配だったんだけど」

……そうでございましょうとも。

「安心したわ」

……は?どこがでしょうか?

「将吾、あなたに対してぞんざいな態度なんだもの」

……はい?

お義母さまは、将吾さんがいる方に目を遣った。
将吾さんは島村さんとわかばさんと喋っていて、わかばさんに対して例の(とろ)けるチーズならぬ「笑顔」を見せている。

「あの子、一人っ子の人見知りでね。
しかも、小さい頃から、外国と日本を行ったり来たりしてたでしょう?わたしもそうだったんだけど、どの国に行っても余所者(よそもの)な気がして落ち着けなくてね。なかなか安心して人に心を開けられないの」

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