『ツインクロス』番外編
夏樹の兄である冬樹は、あの事故以来ずっと世話になっている九十九に恩を返すつもりで日々仕事の手伝いに勤しんでいた。
九十九は、この国ではトップレベルの実力者である。
表に顔や名は出ていないものの、政界や警察関係者等の間では、その名を知らぬ者はいないとさえ言われており、彼を敵に回したならば、この国に居場所はなくなるという噂まである程だ。
現在は高齢になり、島で隠居暮らしをしているただの老いぼれだと本人は言ってはいるが、未だに彼の元へ国家レベルの重要案件の相談や様々な依頼が来ていることを冬樹は知っていた。
その九十九の下で、手となり足となり秘密裏に行動している並木と共に、冬樹もまたその助手として動いていた。
先日も、ある暴力団と警察関係者の裏の繋がりを暴き、数人捕らえたばかりだった。
そんなある日。
バタンッ
事務所のドアが勢い良く閉まる音が聞こえて、パーティション越しに振り返った冬樹は、そこに並木の姿を捉えると笑顔で声を掛けた。
「お疲れさまです!並木さんっ」
だが…。
「悪い、冬樹。ヤバイことが起きた。嫌な情報が入って来たんだ」
普段とは違う険しい表情を見せている並木に、自然と冬樹も不穏な空気を察して表情を引き締める。
「嫌な情報って…。いったい、何があったんですか?」
九十九は、この国ではトップレベルの実力者である。
表に顔や名は出ていないものの、政界や警察関係者等の間では、その名を知らぬ者はいないとさえ言われており、彼を敵に回したならば、この国に居場所はなくなるという噂まである程だ。
現在は高齢になり、島で隠居暮らしをしているただの老いぼれだと本人は言ってはいるが、未だに彼の元へ国家レベルの重要案件の相談や様々な依頼が来ていることを冬樹は知っていた。
その九十九の下で、手となり足となり秘密裏に行動している並木と共に、冬樹もまたその助手として動いていた。
先日も、ある暴力団と警察関係者の裏の繋がりを暴き、数人捕らえたばかりだった。
そんなある日。
バタンッ
事務所のドアが勢い良く閉まる音が聞こえて、パーティション越しに振り返った冬樹は、そこに並木の姿を捉えると笑顔で声を掛けた。
「お疲れさまです!並木さんっ」
だが…。
「悪い、冬樹。ヤバイことが起きた。嫌な情報が入って来たんだ」
普段とは違う険しい表情を見せている並木に、自然と冬樹も不穏な空気を察して表情を引き締める。
「嫌な情報って…。いったい、何があったんですか?」