『ツインクロス』番外編
並木は硬く険しい表情のまま一呼吸置くと、冬樹の目を真っ直ぐに見つめ、意を決したように語り出した。

「先日、上に引き渡した奴等の残党が、まだ残ってたみたいなんだ。それで俺らのことを相当恨んでるらしくて、アイツら卑怯な手に出てきやがった」

並木は自分の左掌を右拳でパンチするようにバチンッ…と打ち鳴らすと、悔しげに舌打ちをした。

「そんなの、ただの逆恨みじゃないですか。それって、もしかして組関係の奴等ですか?」

「ああ。そうだ…」

並木は悔し気に歯をギリリ…と噛みしめた。

その並木の尋常でない様子に何処か不穏な空気を感じながらも、冬樹は核心部分に迫る。

「その、卑怯な手っていうのは…?」

「ああ…。アイツら、俺らの身内を調べたらしくて…」

「えっ?…それって…」


嫌な予感しかしなかった。

並木には身内はいない。天涯孤独の身なのだと聞いている。


ならば…?


「悪い…冬樹。夏樹ちゃんが…さらわれた…」

痛々しげに目を伏せる並木の言葉に冬樹は驚愕した。


まさか。

そんな…?


「まだ詳しいことは分からないんだが、俺らのメンツを掛けて必ず救い出すからっ。冬樹…頼むから冷静でいてくれよっ」

ガッシリと両肩を掴まれ、だがまるで自らにも言い聞かせているかのような、そんな並木の言葉に。

冬樹は、ただ呆然と…。僅かに首を縦に動かすことしか出来なかった。


(…なっちゃん!!)

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