『ツインクロス』番外編
薄暗い倉庫内。

目隠しを外されると同時に夏樹は、ぼやける視界のままに周囲を見渡した。


「ふゆちゃん…。ふゆちゃんは何処っ?」


必死に兄の姿を探す美しい少女の様子に、男たちはニヤニヤと卑下た笑いを浮かべた。

「焦るなよ、お嬢ちゃん。お兄ちゃんなら、これから来るからさ」

「そうそう、あんたを助けに…ね」

制服のまま床に座り込んでいる夏樹を取り囲むように五人の男たちが見下ろしている。

「アイツらには大きな借りがあるんだ。悪いがあんたを有効活用させて貰うぜ」

「……っ」


夏樹は現在の状況を把握するために頭をフル回転させていた。


こいつらは、どうやら並木や冬樹に恨みを持つ者たちらしい。

(ヤバいな…失敗した。私が捕まったことで逆にふゆちゃんたちを不利な状況にしちゃったみたいだ…)


バイトが終わって家へ向かう途中、突然後ろから突き付けられた拳銃。

偽物かな?とも思い、一か八か暴れて抵抗してやろうかと思った所で、「兄貴がどうなってもいいのか?」…という脅しの言葉に思わず動きを止めてしまった。

確かにふゆちゃんは、今危険な仕事を手伝っている。

きっと、様々な恨みつらみをその身に背負ってしまっているに違いない。

これについては全てが逆恨みだけれど、だからこそ、こういうこともあるのかもと思ったのだ。


(だけど…逆に自分のせいで、ふゆちゃんたちを危険な目に合わせるのだけは、絶対イヤだっ)


何とか抜け出してやる。夏樹は意を決した。
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