『ツインクロス』番外編
合同イベントの実行委員になった雅耶は、毎日ミーティングに大忙しだった。


『Cafe & Bar ROCO 』の一角を陣取って、両校の生徒たちが数人ずつ集まって話に花を咲かせていた。

この光景は今日のみならず、このところ毎日のように続いている。

皆で集まる場所を探していた所、この店にしたらどうかと薫が皆に提案したのだそうだ。


「直純先生、何かすみません。今日もあの一角を占領しちゃってて…」

雅耶が気を使ってカウンター越しに挨拶に来た。

そんな雅耶に直純は笑顔を見せると、

「いや、あくまでお客様だからな。こちらとしては、いつもご贔屓(ひいき)にありがとうございます。…だよ」

と言った。

その横に他のテーブルからグラス類を下げてきた夏樹が来たのを見て、雅耶がさりげなく声を掛ける。

店に入った時は薫に手を引かれ、夏樹とろくに挨拶を交わせなかったのだ。

「夏樹、元気か?毎日バイトお疲れさまなっ」

そう、声を掛けたその時だった。


「もお、久賀くん!何やってるの?早く、こっちこっち!」


雅耶をすっかりお気に入りの薫が呼びに来る。

「薫先輩…」

「久賀くんがまとめてくれないと話が進まないのよ」

そうして、何だかんだと手を引かれて行ってしまう雅耶。

その後ろ姿を無言で見送った夏樹は、すぐに気持ちを切り替えるように仕事に戻るのだった。

そんな夏樹の様子を、直純は複雑な思いで見つめていた。

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