『ツインクロス』番外編
フラフラと店を後にした夏樹を、直純は心配げに見送った。


今日の夏樹は微熱があるようだった。

いつもと様子がおかしいので額に手を当ててみたら明らかに自分と比べて熱かったのだ。

だが、それ以上に何処か思い詰めた顔をしていたので大事をとって上がらせた。


実は、夏樹の不調は今日に始まったことではない。

この数日間で日に日に体調を崩していってる…直純の目にはそう映っていた。

(今日は、いつになく調子が悪そうだった…)

一人で帰れるだろうか?それさえも心配になる程に。

だが、客席の雅耶を見ても夏樹が上がったことにさえ気付いていないのか、隣の席の薫と相変わらず楽しそうに話している。


(雅耶の奴、いったい何をやってるんだ…)


誰よりも彼女のことを大切に思っているんじゃなかったのか?と問いつめてやりたくなる。

ミーティングに参加するのは仕方のないことだ。

だが、夏樹の働いているこの店で毎日のようにこんな状態を見せつけるのは、あまりに(こく)というものだ。

明らかに無理している夏樹を見ていると、己の中に何とも言えない気持ちがわいてくるのを、直純は感じずにはいられなかった。

(いい加減、夏樹の気持ちに気付いてやらないと可哀想だぞ。雅耶…)


お前が、そんなことだと…俺は……。


どうしても気になった直純は、仁志に相談を持ち掛けた。

「なぁ、少しだけ席を外しても良いかな?」

明らかに夏樹を心配しての言葉と受け取った仁志は、

「今は空いてるし、もうピークも過ぎた。…心配なんだろう?行ってやれよ」

何もかもお見通しの友人に、直純はニッコリと笑うと。

「サンキュ」

すぐに店を出て夏樹のあとを追い掛けるのだった。

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