『ツインクロス』番外編
それは、本当に偶然だった。

以前、好きだった彼の姿を街で見かけたのは…。


(あれは…久賀くん…?)


久し振りだった。

人混みの中でも分かる、背の高い彼。

変わらない後ろ姿。

後ろから見ただけでも分かる。それ位好きだった人。

でも…。


(隣を歩く…女の子?)


胸にチクリと刺す痛み。

でも、どんな娘だろう。興味がわいた。

回り込んで物陰から二人の様子を伺う。


(…え?…野崎、くん…?)


それは、彼が大切にしていた幼馴染みの友人に良く似ていた。


(似てるけど、違う…?)


幼馴染みの彼は中性的な顔をしていたけれど、そこにいるのは紛れもない女の子だった。

そこで不意に、以前彼が話してくれたことを思い出した。

幼馴染みの彼には双子の妹がいるのだということを。


(そっか…。妹の方だ…。さすが双子。本当に野崎くんに良く似てる…)


綺麗な顔。

男である兄の方でさえ、思わず見惚れて嫉妬してしまう程だったのに。

(その容姿をそのままに、女の子であるとか…狡い…)

横に並ぶ彼を見上げて笑っている、綺麗な横顔に。

無性に腹が立ち、怒りさえ込み上げてくる。


…許せない。

何で今頃出てきて、平然と彼の隣を歩くの?


二人の笑顔が胸に突き刺さる。

私の前では見せたことさえない彼の満面の笑顔。

それを独り占めするアイツ。


…許せない。

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