『ツインクロス』番外編
数人の男達に囲まれながら連れて来られた薄暗い廃ビル。
ごろつきの溜まり場としては、いかにもな場所だった。
ボス的存在の男が、その女を呼びに一旦その場から離れていく。
奥へと入って行くその男の背を見送りながら夏樹は考えを巡らせていた。
(いったい、どんな奴が来るんだろう。ホントに想像もつかない…)
周囲を取り囲んでいる男達は夏樹からは一定の距離を保ち、何も仕掛けて来なかったのでとりあえず様子を見ながら静かに待った。
すると…。
先程のゴツイ男を従えるようにして奥から出てきたのは――…。
(え…?唯花…ちゃん…?)
それは、以前雅耶と付き合っていた女の子…唯花だった。
(何で、唯花ちゃんが…?)
驚き固まっている夏樹に唯花は数歩近付くと、腕を組んで立ち止まりクスリ…と笑った。
「本当にけろっとしてるのね。キモの据わった可愛げのないオンナね」
「何で…」
それは、きっと…どんなに鈍い者にでも解る程の『敵意』。
「あなた、野崎くんの妹さん?でしょう?」
「………」
そう声を掛けられてはた…と気が付いた。
(…そうか。私は今『夏樹』なんだった。唯花ちゃんとは直接面識もない筈なんだ)
彼女と出会ったのは、まだ自分が『冬樹』であり、成蘭高校に通っていた頃のことだ。
だが、それなら尚更何故自分をこんな所に連れてくるのだろう?
…分からない…。
唯花は「二人だけで話したい」と言うと、周囲にいた男達を部屋の外へと出させた。
部屋の出入り口は一つしかない。
その扉の前で待ってると先程のボスらしき男が唯花に伝え、部屋から去って行った。
ごろつきの溜まり場としては、いかにもな場所だった。
ボス的存在の男が、その女を呼びに一旦その場から離れていく。
奥へと入って行くその男の背を見送りながら夏樹は考えを巡らせていた。
(いったい、どんな奴が来るんだろう。ホントに想像もつかない…)
周囲を取り囲んでいる男達は夏樹からは一定の距離を保ち、何も仕掛けて来なかったのでとりあえず様子を見ながら静かに待った。
すると…。
先程のゴツイ男を従えるようにして奥から出てきたのは――…。
(え…?唯花…ちゃん…?)
それは、以前雅耶と付き合っていた女の子…唯花だった。
(何で、唯花ちゃんが…?)
驚き固まっている夏樹に唯花は数歩近付くと、腕を組んで立ち止まりクスリ…と笑った。
「本当にけろっとしてるのね。キモの据わった可愛げのないオンナね」
「何で…」
それは、きっと…どんなに鈍い者にでも解る程の『敵意』。
「あなた、野崎くんの妹さん?でしょう?」
「………」
そう声を掛けられてはた…と気が付いた。
(…そうか。私は今『夏樹』なんだった。唯花ちゃんとは直接面識もない筈なんだ)
彼女と出会ったのは、まだ自分が『冬樹』であり、成蘭高校に通っていた頃のことだ。
だが、それなら尚更何故自分をこんな所に連れてくるのだろう?
…分からない…。
唯花は「二人だけで話したい」と言うと、周囲にいた男達を部屋の外へと出させた。
部屋の出入り口は一つしかない。
その扉の前で待ってると先程のボスらしき男が唯花に伝え、部屋から去って行った。