『ツインクロス』番外編
「久賀くんの好きなものの話。家族のこと、仲の良い友人のこと。幼なじみの野崎くんのこと…。沢山教えて貰ったわ。でも彼は、あなたの話なんか一度もしなかった。彼の中に、あなたの存在そのものがなかったのよ。なのに今頃出て来て何なの?図々しいのよっ」
唯花は夏樹の制服の襟元をギッと握り掴むと、後ろの壁へとその身体を力任せに押し付けた。
「……っ…」
女性のわりに意外にも強い力で押され、夏樹はコンクリートの壁に軽く背を打ち付けてしまった。
明らかな『嫉妬』。
本来なら、こんな仕打ちを受けるいわれは自分にはない筈だ。
(…だけど…)
夏樹は唯花の行動に驚きはするものの、怒り等の感情は浮かんでこなかった。
雅耶のことが好きだという気持ち。
そこから生まれる嫉妬心。
それを隠すことなく表せる、そんな彼女を羨ましくさえ思う。
こんな気持ちは、彼女からしてみれば「馬鹿にしている」と取られてしまうかも知れない。
けれど、自分はそんな風に素直に想いのままに行動することが出来ないから…。
「何なの?その取り澄ました顔。この状況でまだ余裕ぶってるつもり?…ホントにムカつく女ね」
そう言うと、唯花は何処からか小さなカミソリの刃を取り出した。
「その綺麗な顔に傷を付けてあげましょうか?二度と久賀くんの前に出て行けないくらい…」
唯花は、それを人差し指と中指の間に挟み込むと夏樹の首元へと近付けようとする。
だが、夏樹はその腕を咄嗟に掴んでそれを制した。
「なっ…!!」
思いのほか強い力で握られ、唯花は動揺を見せる。
唯花は夏樹の制服の襟元をギッと握り掴むと、後ろの壁へとその身体を力任せに押し付けた。
「……っ…」
女性のわりに意外にも強い力で押され、夏樹はコンクリートの壁に軽く背を打ち付けてしまった。
明らかな『嫉妬』。
本来なら、こんな仕打ちを受けるいわれは自分にはない筈だ。
(…だけど…)
夏樹は唯花の行動に驚きはするものの、怒り等の感情は浮かんでこなかった。
雅耶のことが好きだという気持ち。
そこから生まれる嫉妬心。
それを隠すことなく表せる、そんな彼女を羨ましくさえ思う。
こんな気持ちは、彼女からしてみれば「馬鹿にしている」と取られてしまうかも知れない。
けれど、自分はそんな風に素直に想いのままに行動することが出来ないから…。
「何なの?その取り澄ました顔。この状況でまだ余裕ぶってるつもり?…ホントにムカつく女ね」
そう言うと、唯花は何処からか小さなカミソリの刃を取り出した。
「その綺麗な顔に傷を付けてあげましょうか?二度と久賀くんの前に出て行けないくらい…」
唯花は、それを人差し指と中指の間に挟み込むと夏樹の首元へと近付けようとする。
だが、夏樹はその腕を咄嗟に掴んでそれを制した。
「なっ…!!」
思いのほか強い力で握られ、唯花は動揺を見せる。