異世界征服
そんな世界ある訳ない。
さっきのは何かの見間違いだ。
さあ、どんな風に乗り切る。

俺は明らかに興味本意だった。
が、後悔は遅すぎた。

「やったあ!ありがとう槙くん!じゃあすぐ行くよ、もう“アイツら”いるから」
そう言って手を引かれ、目を瞑るよう指示された。
ほんの少しの間、目の前が真っ暗になった。
立ち眩みのような目眩のような症状に襲われた。
突然目越しに明るさが戻った。
目を開けていいと言われた。

異世界だった。

モノトーンで、街並みは俺の知る世界に似てて、体が浮く位重力が違った。
こんな世界を俺は見たことがなかった。

「なっ!」
突然なことで素っ頓狂な声になった。
コイツが急に俺を投げとしたりするから。
「ほっ!」
かと思ったら、今度はコイツが飛んできた。

「バカッ!何してる!」
矛盾してると思う、実際俺はコイツに飛ばされたままの状況だから。
だけどコイツは、そんな俺にはお構い無しに、突然俺を抱き抱える。
慣れているのか、その後も走るように屋根を飛んでいく。

次期に遠目だが、モノトーンの街に淡く青に光る化物が見えた。
恐らく、さっきコイツが言った“アイツら”というのは、この化物のことだろう。

正直、コイツに抱き抱えられてる今現在も、この可笑しな世界に冗談半分に来てしまったことも、あの巨大な青い化物のことも、何が何だか全くわからない。
が、わからない時点で、もうコイツに従うしかないのだと思った。
実際俺だったら、この重力に未だ慣れられず、比べ物にならない位移動が遅いだろう。

コイツのことを中二病だのストーカーだの思っていたのを後悔しつつ、何とかこの空間に慣れようと今はとにかく集中する。

少しして、化物から少し離れたところで、俺は降ろされた。
「一応シールド張っとくけど、出ようなんて思わないでよ」
コイツ改め彼女は、そう言って半透明な円形の膜を、俺の周辺に張った。

出ようなんて思うかよ。
こんなとこで出たら、何が起こるか……。
それより今は、この状況の解決に努めよう。

なのにどうして、こうも考え始めてすぐに色んなことが起こるんだ。
「お前っ!その翅っ!」
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