いつか、らせん階段で

再会は石鹸の香り

彼だ。

いや、正しく表現するならば、3年前に付き合っていた彼がいる。
どうしてここに。
なぜこの街に。
そしてどうして私を見つめているの。




私は特別な日にだけこのお店に来ては自分へのご褒美を買う。

ここは私の学生時代からお気に入りのインテリアショップ。
国内外から集められた雑貨や家具、寝具、ハウスウェアなんかがセンス良く配置されていて、ああ、いつかこんな風にこんな感じのものに囲まれて生活したいなと思わせる夢の世界なのだ。

いつものようにバスグッズのコーナーに行く。
このお店にしかない特別なバスボム。店長の手作り品だと知ったのは数年前。

1個1500円のバスボムはそう頻繫に買えるものじゃない。
あの限られたお給料で私には生活があるし、他に欲しいものもある。
だから、これは自分へご褒美をあげたくなった時にだけ。
全てが一点もの。
香りも形も全てが違う。

2週間と空けずに買いに来る時もあれば、２カ月以上来ない時もある。

誕生日、クリスマス、ボーナスが支給された、研修を頑張った、イヤな上司の嫌味に耐えた、ご褒美の理由はさまざま。自分がご褒美をあげたくなれば理由など何でもいい。

就職して自分の稼ぎで暮らすようになってから5年。こんな感じ。

以前はここでお気に入りの香りのボディソープやスキンケアグッズも買っていたけれど、それは３年前のあの日からやめた。
今は無香料。

そう、もう３年か。