いつか、らせん階段で
プロポーズはショコラの香り
「夏葉ちゃん、いらっしゃい。久しぶり」
「こんにちは。可南子さん」
私はカウンターに座り日替わりランチを頼んだ。
「桜ちゃんと桃ちゃんは元気ですか」
「うん、手足口病やった後は感染症もないし元気だよ」
可南子さんはこのカフェのオーナーの奥さんで双子のママさん。
私と尚也が出会うきっかけを作った人だ。
「あ、可南子さん。ここ夜の営業を再開するんですか?桜ちゃん達は?」
私は店内に貼られている営業時間変更のお知らせを見ながら声をかけた。
「ああ、これね」
以前ここはダイニングバーで夜の営業のみだった。
それが可南子さんの出産を機にランチタイム営業のみにしていたのだ。
「バイトの真緒ちゃんと森本君を正社員に雇ったのよ。だから、私は基本的にお店に出るのは今まで通り昼間だけ。それよりも、夏葉ちゃん・・・」
私の顔を見た可南子さんの表情が曇った。私はすぐに理解した。
「ここに尚也が来たんですね」
「そうなの。先月だったかな」
「ちょうど桜と桃がお店に来ていて、うちのチビ2人と真緒ちゃんが夏葉ちゃんの話をしている所が尚也くんの耳に入ってしまって」
「仕方ないですよ。真緒ちゃんは私たちの事情を知らないし桜ちゃんや桃ちゃんは小さかったから尚也の事は覚えてないんだし、子供に口止めはできませんから」
「双子の誕生日プレゼントの話から夏葉ちゃんのお気に入りのお店の情報を教えてただけみたいだけど、それだけなら尚也君に出会ったりしないわよね?」
私は苦笑した。
「残念ながら、もう出会ってしまいました」
私はお気に入りのショップで尚也と出会った話をした。