ちょっとした短編
甘いものはこれだけではない
時計が午後三時を告げる。
そういえばしばらくおやつも食べれていなかったな、と思い立ち食堂へ足を運ぶと、そこにはおそらく僕と同じ事を考えているらしいマリーが、三時のおやつにするものを探してさまよっていた。
「やあマリー、君もおやつが欲しいのかい?」
「アマデウス!ええ、何かないかと探してみてはいるのだけれど…」
そういったものは見つからないの、と少しだけ残念そうな表情をして肩をすくめた。
そんな彼女に、僕から一つ提案をしてみようと思う。何、とても素敵な事だよ。
少なくとも、今の彼女にとっては。
「…ねえ、マリー。君、冷蔵庫の中は見たかい?」
「ええ、見たわ。それがどうかして?」
「いや。実はコレね……」
と、僕しか知らないその箱の奥を開ける。
いわゆる隠し貯蔵庫ってやつだ。その奥には、マスターが焼いてくれた美味しそうなガレットが入っていた。
「!?アマデウス、これって……!」
「ふふん、驚いたかい?本当は、僕だけの秘密であり特権なんだけど…今回は、君にもお裾分けしてあげる。一緒にティータイムと洒落込もうじゃないか、マリー!」
僕がそう言うと、マリーは心の底から嬉しそうな笑顔になって。
「…ええ!素敵な時間になりそうね、ダンケシェン、アマデウス!」
と、お礼と共にちいさなベゼをしてくれた。
いやあこれは、後でマスターにもお礼を言いにいかなくちゃいけないかな?
そんな事を考えながら、これから始まるであろう最高の時間に思いを馳せた。