一駅の距離
いつも降りない駅から降りる、
というのはそれだけでワクワクとした気持ちになる。

会社までの道順は正直良く分からなかったが、
方角さえあっていたらいつかは着くだろう。

電車からいつも見ていた公園にたどり着いた。
朝早い時間なので、
人は少ないと思っていたが
散歩をしているらしい人と
何人もすれ違うのに驚いた。
「散歩をしている人」とは不思議なもので
すれ違うたびに挨拶をしてくれるのだ。

山歩きにも「すれ違う人には挨拶をしましょう」という
ルールがあるのだが
散歩にも適用されるのか?

始めは、何となく気恥ずかしくて
会釈のみを返す程度に止まっていたが、
一度思い切って挨拶を返すと、
なんとも言えない爽快感がこみ上げてきた。

こんな些細なことで…と自分でも呆れたが
たまにはこういう気分も悪くない。


このまま会社を休んでしまおうとも考えたが、
そこまで思い切ったことが出来ないのが
悲しい小市民の性。

会社には15分遅れで出勤した。
遅刻の理由は
「通勤途中でコンタクトを落とした」
と言っておいたが、
そういえば俺は裸眼で2.0あったっけ。

・・・まぁ、良い・・・・・・
特に咎められなかったので
そのまま仕事を始めることにした。

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