夢現物語
「見て………赫夜姫(かぐやひめ)が月に帰る場面よ。」

姫君が指指されたのは、赫夜姫が天人に連れられ、月に帰る絵。

「母様みたい、と思ったの。あの日、母様がいらっしゃらなくなる前の日、不思議な夢を見たのよ、私。」

ふう、と溜め息をつかれ、御簾の外を御覧になる。

「母様が、天女の羽衣をお召になられて、天女達に連れて行かれたわ。夢だと思ったのよ。…………夢では、なかったのね。」

弱々しく、それでも姫君はお美しく笑われ、

「我が君は 千代に八千代に 細石の 巌となりて 苔のむすまで」

と、詠われた。
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