夢現物語
姫君は、明くる朝、なかなか起きては来られなかった。

(どうして?何故、こうなってしまったのかしら………。私は…………)

昨晩のことで御心を痛めなすって、ずっと、沈み込んでいらした。

(逃げれば良かったのに、何故、そうしなかったの?いきなりで、驚いたから?蛻けの殻になれば、逃げられはずよ?)

姫君の枕元は、涙で濡れてしまっておられ、姫君御自身も、あれ程泣いたのに、涙が枯れないのかと御自分でも不思議であられた。

枕元に、貴久がこっそりと置いて置かれた、一通の御文。

(こんな物、今は、見たくないわ。ああ、如何してこうなってしまったのかしら。嘆かわしい我が身だことよ。)
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