夢現物語
和泉は、藤一条の姫君の御事を第一に考えていて、今の今まで、姫君を裏切ることは、決してしなかった。
(逢鈴は、貴久君に仕えることとなったのだったかしら。ならば、私のことを教えたのは、逢鈴だわ。他の女房なら、こんなこと………私を女房だと思い込んでいるのだから。)
泣きすぎて、色が抜けてしまいかけた袖を見られ、また、おお、と泣き出してしまわれた。
(信頼していた筈の女房さえ、裏切られたのだ。ああ、人を信じてしまった私は、うつけだわ………私は、人間ではないのに…………所詮、人は、己が一番可愛いと思うのは、本当なのね。)
貴久の若君は御自身のお部屋に戻られ、やはり、ぼんやりと外を眺めておいでだった。
(逢鈴は、貴久君に仕えることとなったのだったかしら。ならば、私のことを教えたのは、逢鈴だわ。他の女房なら、こんなこと………私を女房だと思い込んでいるのだから。)
泣きすぎて、色が抜けてしまいかけた袖を見られ、また、おお、と泣き出してしまわれた。
(信頼していた筈の女房さえ、裏切られたのだ。ああ、人を信じてしまった私は、うつけだわ………私は、人間ではないのに…………所詮、人は、己が一番可愛いと思うのは、本当なのね。)
貴久の若君は御自身のお部屋に戻られ、やはり、ぼんやりと外を眺めておいでだった。