夢現物語
(あぁ、藤一条の君は、嫌だったのか。でなければ、こんな、悲しい歌を、送り付けて来るだろうか。非常識では無いはずの方なのに。)

完全に、彼処を傷つけてしまったのだ、と後悔なさった。

(しかし、あんな美しい方を見つけられた、父君も凄いと思われる。何故か。あの方は、少し、父君に、似ていた。もしかしたら、秘密を持つ方かもしれない。)

そう思うのは、二回目なのだ。
御本人は、覚えていらっしゃるだろうか。

「鈴鹿。」

先程の女童の名である。
いつだったか、姫君と御文を交わしていた、沙夜の妹であった。

「鈴鹿、お前、藤一条の君について、何か知っているか。」
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