夢現物語
「藤一条様のことですか?あたくしは、何も、知りませんよ。」

「そうか。」

分かっていたものの、そう、バサりと切り捨てられるのは、少し悲しい。

「あ、でも、姉様………沙夜なら知っているかもしれません。藤一条様の幼い頃を知っていると、独り、言っておりましたわ。」

「沙夜。」

「はい。丁度、沙夜はおりません。曹司に、何かあるかもしれませんね。」

流石、唯一教養のあった女童、沙夜の妹で、笑う声まで上品だ。

貴久も、何か思いつかれた様に、

「よし、僕も、其方に行こうか。」

と、若君らしくないことを仰るので、鈴鹿は慌てた。
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